9月3日、オンラインで会見した
ブラインドサッカー男子日本代表の高田敏志監督 
(提供:日本ブラインドサッカー協会)

日本ブランドサッカー協会(JBFA)は9月3日、「男子日本代表活動説明会」をオンラインで行い、高田敏志監督が8月8日から15日まで実施した合宿の成果などを報告。コロナ禍で落ちていた選手のコンディションも順調にリカバリーできている状況など、手ごたえを語った。

同合宿は1週間で最大5試合(グループリーグ3試合、準決勝、決勝)をこなす東京パラリンピックの競技日程を想定し、紅白戦5試合を組み込んだ「シミュレーション合宿」としてさまざまな工夫を凝らして実施された。

高田監督によれば、大きく「6つのテーマ」を掲げて合宿に臨んだという。1つ目は「スケジュールへの適応」で、試合時間に合わせてホテルからの移動やウォーミングアップ、飲食物の摂取や試合後のケアなどまで、「1日のタイムスケジュールを細かく区切り、それぞれストレスなく実施できるか」などをテストした。

2つ目は「コンディションの回復状況の確認」だ。同代表は約3カ月間の活動自粛期間を経て6月10日から活動を再開させたが、練習不足により特に持久力が2~3割ほど落ちていたという。そこで、6月から8月までの3カ月で段階的なリカバリーメニューを作成し、コンディション回復に努めてきた。合宿はその成果を確認する重要な機会でもあったが、体重や脈拍といった生理データや選手の主観による疲労度に加え、紅白戦中の測定データからもコンディションの順調な回復具合が確認できたという。

例えば、紅白戦1試合中の走行距離は過去の国際大会時のデータと比較しても遜色なく、「気候の差があるなかで、ここまで走れたのはリカバリープログラムの成果。筋肉系の故障者も出なかった」と安堵の表情を見せた。

3つ目は、高温多湿下での試合が予想される東京パラに向け、「最大の課題」ととらえ、慎重に実施したという「暑熱環境下への適応」だ。水分摂取量や尿比重、体重といった科学的データから全選手の健康状態をチェックし、熱中症の危険性が見られた選手には水分摂取を促すなどの対応で、熱中症防止対策をテストできたという。

4つ目は、「休養とリカバリー」だ。短期決戦のパラリンピックでは心身の健康維持も不可欠であり、今回は「サッカーを完全に忘れてリラックスする時間」も設けたという。特に準決勝に集中力高く戦えることを目標に、前日の過ごし方として家族とオンラインで交流する時間や、北京オリンピック新体操日本代表の坪井保菜美さんを講師にヨガを取り入れたところ、リラックス効果が見られたといい、「(来年の)本番にもお願いする方向」と話した。

5つ目は「新型コロナウイルス感染予防対策」で、シングルルームや一般客とは別の動線確保など、「できるだけ人と会わない環境を整えた」という。

6つ目は、「チームとして戦い方の確認」で、高温多湿の気候に慣れているホームアドバンテージを選手に意識させながら、さまざまな戦術のフォーメーションを確認した。紅白戦の映像分析でよかった点や課題を抽出し、個人としてチームとして確認、共有し、実戦に生かすよう意識付けた。

思いがけない刺激もあった。11日にはサッカー日本代表の森保一監督が視察に訪れ、選手たちのプレーに加え、スタッフの献身性なども含め、「チーム一丸の体制」を高く評価。「サッカーファミリーとして一緒に頑張ろう」という心強いエールを送られ、チーム皆が力を得たという。

日本は今、世界ランキング12位だが、高田監督は、「(コロナ禍で)今のランキングはあてにならない。メダルの可能性もあると思う。本番までどれだけ練習できるか」と意気込む。今後の対外試合のめどは全く立たない状態だが、1年後の大舞台を見据え、暑熱順化などホームアドバンテージも生かしながら、心、技、体のさらなる進化を目指す。

(取材・執筆:星野恭子)