先頭でゴールする山本選手

先頭でゴールする山本選手

第36回大分国際車いすマラソン・男子(T34・T53・T54)フルマラソンは、山本浩之選手(50歳)が優勝。
2位に鈴木朋樹選手(22歳)、3位にエレンスト・ヴァン・ダイク選手(43歳・南アフリカ)が入った。

レースは、7連覇を狙っていたマルセル・フグ選手(スイス)が2キロ付近でコースアウトし、途中棄権。
優勝候補のフグ選手が序盤でいなくなったことで、先頭集団を形成していた山本浩之選手、鈴木朋樹選手、
西田宗城選手(32歳)、エレンスト・ヴァン・ダイク選手の4名に、優勝のチャンスが訪れた。

大分のコースを得意としているベテランの山本か。
リオパラリンピック日本代表を逃した西田が、悔しさを晴らすレースをするのか。
それとも、過去に総合優勝の経験のあるエレンストが獲りにいくのか。
若手でスピリント力のある鈴木が優勝して、世代交代を印象づけるのか。
4人のうち誰が、どこで、勝負を仕掛けるのかが見どころになった。

西田選手(写真右)、鈴木選手(写真中央)、エレンスト選手(写真左)

西田選手(写真右)、鈴木選手(写真中央)、エレンスト選手(写真左)

ベテランの山本は、30キロ付近まで、西田と前に出て引っ張る走りをしながら考えていた。
「このまま最後のトラックに入られたら、鈴木朋樹選手に差される可能性がある。どこかで朋樹の体力を削っておく必要がある」

鈴木は、トラック種目800m、1500mをメインにしており、スプリント力のある選手。
その鈴木が前に出ず、他の選手の後ろについて走っており、力を温存しているように見えた。
力を蓄えた状態でトラック勝負に持ち込まれたら、鈴木が有利になる。

大野川大橋を渡り、35キロ付近、鈴木が前に出て、エレンストが続いた。西田、山本との距離が少し空いた。
それは、山本にとって、狙いどおりの展開だった。

「(30キロ過ぎ、鶴崎地域にある)テクニカルコースから、鈴木を前に出しました。
鈴木に逃げていると思わせて、走らせて体力を使わせようと考えました。
自分は、目測でこのくらいなら追いつけるという距離をとって走りました」

三海大橋の下りを使って、山本はスピードを一気に上げて、再び、前を走る2人に追いつき、
40キロ地点で先頭を獲った。陸上競技場に先頭で入ってきたのは、山本。鈴木はすぐ後ろについていたが、トラック内で山本を追い抜くことはできなかった。

2位の鈴木は、「今回は、マルセルと勝負をしようと思ってきていたので、それが前半でなくなってしまって、面白くなくなってしまいました。日本人1位は狙っていましたが、大分のコースを知り尽くしているという点で、山本選手のほうが経験上、一枚上手でした。完敗ですね。トラックでなら勝てるという自信がありましたし、いけるという感じがあったのですが、最後は体が硬くなってしまったと思います。でも、こういう経験が次につながっていくと思います」と話した。

4位の西田は、結果について「すごく、悔しい気持ちでいっぱいです」と一言。30キロ過ぎ、山本と話をしたわけではないが、「鈴木を少し前で走らせよう」という雰囲気は感じ取っていたという。
「ここは少し、朋樹とエレンストの2人を泳がせようかという感じがしたので、ある程度の距離をもちながら追いかけていきました」と西田。

2人の後方を山本とともに走っていたが、三海大橋の下りを利用して再びスピードを上げた山本についていくことはできなかった。後から追いかけたが、前を走る3人には届かなかった。
西田は、「自分が得意とするスピードのある展開にもっていかないと厳しかったですね。そこは、もう一つでした。自分は、平坦なところでトップスピードを維持できることが長所なので、そこを伸ばしていくことで勝負できたらと思います」と話した。

(取材・撮影:河原レイカ)