強さをみせつけたマルセル・フグ選手

強さをみせつけたマルセル・フグ選手

 第34回大分国際車いすマラソン・フルマラソン男子は、スイスのマルセル・フグ選手(28歳)が序盤から一人飛び出し、世界記録を更新する勢いで独走。記録更新はならなかったが、2位以下の選手を大きく引き離して優勝した。大会5連覇。記録は1時間21分40だった。

 2位は、洞ノ上浩太選手(40歳)、山本浩之選手(48歳)、副島正純選手(44歳)の日本人3選手の争いとなった。大野川大橋(30km)付近で洞ノ上選手が仕掛け、一時、副島選手が遅れたが、その後、追いつくなど、競技場までもつれる展開となった。最初にトラックに入った山本選手が2位(記録1時間28分27)、それに副島選手が続いた(記録1時間28分28)。洞ノ上選手は4位(記録1時間28分28)。

表彰式で笑顔のマルセル選手

表彰式で笑顔のマルセル選手

 マルセル選手は、「大分のコースは好きで、大事なレースで勝ててうれしいです。今日は、いいスタートが切れました。後続の選手がついてこれなかったのは残念です。31キロ過ぎまで世界記録ペースで走っていることはわかっていましたが、そのあとペースダウンしてしまったのは残念です」と話した。

写真左から、2位争いを展開した山本選手(No2)、副島選手(No3)、洞ノ上選手(No4)

写真左から、2位争いを展開した山本選手(No2)、副島選手(No3)、洞ノ上選手(No4)

 マルセル選手の圧倒的な強さを見せつけられたレース。
2位の山本選手は、「毎年、スタートからマルセルに逃げられているので、今年はキャッチしようと思っていたんですが、弁天大橋で逃げられてしまいました。日本人3選手でローテーションしながらいけば追いつけるかなと思ったんですが、パワー不足で逆に離されてしまったというところです。残念で、いろいろ課題の残るレースでした」と話した。マルセルを追いかけることと、3選手での2位争いの両方を意識して、最後まで気の抜けないレースだったという。
 3位の副島選手は、雨天の影響で上りの漕ぎに苦労し、後半は、洞ノ上選手の揺さぶりに何度か離されそうになる場面をこらえた。「調子はよかったので、本当はもう少しくい込みたかったです。最初は3人でローテーションをしながらマルセルを追いかけてみたんですけど、まったく追いつけなくて。2位争いになってしまったんですけど、最後、トラック勝負になって、伸びきれなかったですね。一番最初にマルセルについていけなかったのが、ショックというか、厳しかったです」と話した。

2位争いを展開した日本人3選手とも、「マルセルをとめよう、追いかけよう」という思いはあったが、それを実現する走りはできなかった。日本人では、久保恒造選手が5位(1時間33分52)、吉田竜太選手が(1時間33分54)が7位。
世界トップクラスの選手の力を改めて印象づけられるとともに、国内トップ3選手と他の日本人選手との差も気になったレースだった。

写真左からマニュエラ選手、土田選手、タチアナ選手

写真左からマニュエラ選手、土田選手、タチアナ選手

フルマラソン・女子は、スイスのマニュエラ・シャー選手(29歳)が、1時間38分42で優勝。前大会と同じく土田和歌子選手(40歳)との争いになったが、トップを譲らなかった。2位の土田選手は1時間38分43。アメリカのタチアナ・マクファーデン選手(25歳)は3位だった(1時間41分42)。
マニュエラ選手は、「タフなレースでした。タイムはとても速く、世界記録まであと少しというかたちでした。スーパー・ハッピーです。昨年もそうでしたが、多くのレースで土田和歌子選手と接戦になります。とにかく、先にトラックに入りたいと思っていました。雨の天候の中、いったい何人の方がいるんだろうと思うくらい、たくさんの方が沿道で応援してくださっていました。また、大分に戻ってきたいと思います」と話した。

(取材・撮影/河原由香里)