男子4×100mリレー、第4走者の山本篤選手
男子4×100mリレー、第4走者の山本篤選手

■日本記録更新への思いを胸に

大阪の長居第2陸上競技場で6月8日、9日に開催された第24回日本身体障害者陸上競技選手権大会、男子(T42-46)4×100mリレーは、45秒41の大会新記録で、日本記録45秒36に迫る記録だった。

個人種目が主となる陸上競技の中で、リレーはチーム種目。今大会では、複数のチームで競うのではなく、日本代表チームによる記録への挑戦となった。大会の最終種目でもあり、観客の声援はひとつになった。
「惜しい…」。
第4走者の山本篤選手(T42)がゴールした瞬間、記録を見守っていた観客たちからは、言葉にならない声が漏れた。
「ひと言でいえば、悔しい、ですね」
山本選手は、4×100mリレーをこう振り返った。日本記録にあと0.05届かなかった。タッチ方式でのバトンで、第2走者の佐藤圭太選手と第3走者の芦田創選手の間でタッチがうまくあわない場面があったが、山本自身もバトンのミスがあったという。
今大会、山本選手は、200m26秒85(大会新記録)、100m12秒82(大会新記録)という記録を残したが、自身が持つ日本記録200m26秒72、100m12秒73の更新は叶わなかった。リレーでの日本記録更新に寄せていた思いは、人一倍、強いものだったのかもしれない。
7月にフランスで開催されるIPC世界選手権では、100m、200m、走り幅跳び、リレーに出場する予定だ。
「世界選手権は、リレーで良い順位を狙っていきたいと思っています。日本記録更新と、上位入賞、できればメダルを」。

競技後、笑顔で談笑する樋口政幸選手
競技後、笑顔で談笑する樋口政幸選手

■見えてきた光、さらなる輝きを求めて

男子(T54)の樋口政幸選手は、400m50秒50、800m1分37秒15で優勝。1500mでは日本記録の2分59秒84には届かなったが、予選3分04秒48、決勝3分06秒37で走り、優勝した。
今大会に向けて調子を上げてきた選手の一人だが、樋口選手は、昨夏のロンドンパラリンピック以降、苦しい時期があったいう。

ロンドンパラリンピックの後、樋口選手はグローブの変更を決断。プラスチック素材の固いグローブではなく、手袋に簡単な加工を加えたものに変えた。しかし、変更直後は走るとすぐに疲れが出てしまい、練習量をこなせなかった。
外国人選手のグローブを参考に、より速く走るための変更だったが、思うように走れず、先が見えない日々が続いた。

「グローブがようやく馴染んできて、今年の4月くらいから、調子が戻ってきたんです」と樋口選手。
先の見えない暗闇を抜け、光が見えてきたところかもしれない。
7月のIPC世界選手権では、800m、1500m、5000mに出場する予定だ。つかんだ手ごたえを、結果につなげたい。1500mでの日本記録更新への期待がかかる。

女子100m(T44)を走る 髙桑早生選手
女子100m(T44)を走る 髙桑早生選手

■「できない」を「できる」に変えたい

イタリア・ローマで開催されたダイアモンドリーグに出場し、帰国後すぐに今大会2日目の100mに出場した女子(T44)の髙桑早生選手。記録は14秒17だった。

「調子は悪くはないんですけど、なかなかタイムに出てこなくて」と髙桑。
ロンドンパラリンピックの後、「一から、やり直す」という気持ちで練習を積んできたが、まだまだ「できない」ことがあると考えている。一つひとつ「できる」ことを増やし、目標に掲げている日本記録(100m13秒84、200m28秒52)更新を目指す。
日本代表選手に選ばれている世界選手権まで、約1カ月。調子を上げて、100m、200m、走り幅跳びに臨むつもりだ。

(取材/撮影 河原由香里)