大会レポート チャレンジ陸上大会2013

記録更新を目指して走る 和田信也選手とガイドランナーの志田淳さん
記録更新を目指して走る 和田伸也選手とガイドランナーの志田淳さん

熊本市の水前寺陸上競技場で4月21日に開催された「チャレンジ陸上大会2013」には、2012年夏のロンドンパラリンピックで活躍した選手たちも参加した。
今大会は、IPC(国際パラリンピック委員会)の公認大会の1つになっており、選手の成績は7月にフランスで開催される「2013 IPC陸上競技世界選手権大会」の出場選手選考の参考にされる。
選手たちにとっては、冬季に積んだ練習の成果を確かめ、今後に向けて課題を見つける機会でもあった。夏の世界選手権大会を視野に入れた挑戦が始まっている。

目標記録に届かず、調整の難しさを感じる

男子5000mには、ロンドンパラリンピックで銅メダルを獲得した和田伸也選手(T11)と、ロンドンで自身の持つ日本記録を更新した堀越信司選手(T12)が出場した。

和田選手は、今大会の1週間前の記録会で自己新記録となる15分51秒台で走っていた。調子が良いという手ごたえもあり、今大会での記録更新をねらっていたが、結果は16分21秒00。
「調子をあわせたつもりだったんですが、タイムに結びつきませんでした。1週間前に調子が良かったので、15分40を切りたかったんですが、ちょっと気負いすぎたかもしれません」と残念そうに振り返った。

和田選手は、「課題は、やはりきつくなった時に、どれだけこらえていけるかというところです。あとは、最後の切り替えをしっかりできるようにということですね。ロンドンで銅メダルという1つの結果を出せたんですけど、もう一歩、レベルアップしたいです」と話した。

堀越信司選手の走り
堀越信司選手の走り

堀越選手は、「試合の走りではなかったです。粘りという文字が見当たらないですね。集中しきれていなかったかもしれません」と反省。
2000mまでは悪くなかったが、それ以降、1周あたりのタイムが落ち、そのまま粘れずに終わってしまった。自分自身が持つ日本記録は14分48秒89。調子が悪くても15分1ケタ台というタイムが念頭にあったが、結果は15分24秒83だった。
冬季の練習はしっかりできていたが、大会に入る前の練習内容が「雑になっている」と感じていた。そこを修正して、今大会に臨めなかったという。
堀越選手は、「練習はできていても、ただ距離を積んでいるだけで、それを走りに活かせていないと思います。反省を、次に活かしたいです」と話した。

世界選手権を視野に

スタートラインに立つ、佐藤圭太選手(右)
スタートラインに立つ、佐藤圭太選手(右)

男子100mと200mに出場した佐藤圭太選手(T44)は、「大学が忙しく、これまでのような練習時間を確保するのが難しいんですが、200mに関しては、自分が思っていたよりは良い結果が出たと思います」と話した。記録は100m12秒48,200mは24秒7だった。

冬季は大学の部員と一緒に強化練習をし、ウエイトトレーニングをしっかりできたため、今年は良い記録を出せるのではないかと感じている。
現在、改善に取り組んでいることの1つは、スタート。
スタートの時に肩や首に力が入ってしまう傾向があったため、ブロックの位置を変えて足の位置をこれまでよりも開けるなど、試行錯誤しているという。
就職活動で多忙だが、世界選手権大会の出場選手に選ばれた際には、100mと200mで入賞を目指すつもりだ。

世界選手権までに記録更新を目指す 髙桑早生選手(右)
世界選手権までに記録更新を目指す 髙桑早生選手(右)

髙桑早生選手(T44)は、100m14秒19、200m30秒3という記録だった。
「100mも200mも体はしっかり動いていました。調整はよくできていたんですけど、結果がついてこなくて。ちょっと悔しい結果に終わりました。練習と本番で違うところがあり、調整してきたところがうまく本番で噛み合わなかったと思います」と振り返った。

髙桑選手は、ロンドン以降、冬季には走り込みや技術練習を細かく実施した。例えば、100mのレースを局面で切り取り、各局面でどのような走りをするかを見直し、練習していったという。
現在の自身の走りについて、スタートから加速までは良い感触を得ているが、加速を後半につなげるための動き、動きの切り替えが上手くいっていないと考えている。

「世界選手権までに日本記録(T44は、100m13秒84,200m28秒52)を出したいと思っています。世界選手権でも入賞したいです」と髙桑選手。
今後の記録更新に意欲を示した。

※クラスの説明
[視覚障害]
T11=光覚無しから光覚まで。どの距離・方向からでも手の形を認識できない。
T12=手の形を認識できるものから、視力0.03まで。また視野が5度以内。

[立位/切断・機能障害]
T44=片下腿切断(足関節離断含む)または、片足関節の機能を全廃したもの。

取材・撮影/河原由香里