永尾嘉章選手

永尾嘉章選手

IPC(国際パラリンピック委員会)公認 日本パラ陸上競技選手権大会
(4月30日、5月1日、鳥取コカ・コーラウエストスポーツパーク)は、
2020年東京パラリンピックでの活躍が期待される若手選手の成長と、
今夏のリオ・パラリンピックを照準に調整しているベテラン勢の現状が
みえる大会となった。

生馬知季選手

生馬知季選手

車いす・男子(T54)100m決勝は、生馬知季選手(WORLD-AC)が、
日本記録保持者・永尾嘉章選手(ANAORI A.C)を抑えて優勝した。

男子100m(T54)
1位 生馬知季 14秒68
2位 永尾嘉章 14秒74
3位 西勇輝  15秒50

生馬は、今年2月に、地元の和歌山県を離れて岡山県に移住。
陸上に打ち込める環境を整えて、今シーズンに臨んでいる。
練習を継続的にできていることが、今大会での好調につながった。

100mの優勝について、「個人的には、最後に走りに焦りが出たことが課題です。
ただ、トップスピードが悪くはなかったですし、自己ベストを出すことができて
うれしかったです。この競技を始めてから、永尾さんの背中をずっと追い続けて
きましたので、このレースでやっと背中をみせることができて良かったです」と生馬。
今後は種目の幅を広げながら、タイムの向上を目指していくつもりだ。

短距離種目の“レジェンド”と呼ばれる50代の永尾嘉章選手は、100m決勝について、
「最近の大会で、生馬選手の調子が良かったのでマークはしていたんですけど、
調子が良かったですね」とコメント。
リオ・パラリンピックに向けた調整段階の走りであっても、勝負においては、
まだまだ若手選手に譲るつもりはない。
400m決勝では優勝し、「勝って帰るのと、勝ちなしで帰るのとは違います。
予選よりも決勝でタイムを上げられたので良かったと思います」と話した。
リオまでの期間は、スタートダッシュの精度、中間加速を中心に
練習を続ける。

男子400m決勝
1位 永尾嘉章 50秒39
2位 樋口政幸 50秒97
3位 生馬知季 51秒45

800m、1500m、5000mで優勝した樋口政幸選手

800m、1500m、5000mで優勝した樋口政幸選手

男子(T54)800m決勝と1500m決勝の見どころは、鈴木朋樹選手(関東パラ陸協)と
樋口政幸選手(プーマジャパン)の走りだった。

樋口は、自身の状態をリオ・パラリンピックでピークにもっていくため、
冬季はウエイトトレーニングを中心にした体づくりに取り組んでいた。
レーサーでスピードを出す走りは、これから夏にかけてじっくり仕上げていくつもりだ。

一方、鈴木朋樹は、リオ・パラリンピックでの日本代表入りを目指しており、
代表選考の指標となるIPCランキング(5月7日現在:男子T54、800m 13位)の上位をねらっている。

競技初日(4月30日)の1500m決勝は、鈴木朋樹が積極的に前に出て、集団を引っ張った。
「これまでの大会で、樋口さんが先頭で集団をひっぱって最後までゴールするという展開が
続いていましたので、新しいレース展開をしようと思いました」と鈴木。

昨年のジャパンパラ陸上競技大会のレースでも先頭を獲ることに挑戦したが上手くいかなかった。
今大会では先頭を獲り、自分がいけるところまで集団を引っ張るつもりでいた。

鈴木は、「自分が先頭で集団をひっぱれば、その後は、樋口さんが抜いてくるかたちになります。
樋口さんに抜かれた後は、自分がついていくか、ついていかないかになると思いました。
抜かれた後は、全力で追いかけたんですが、もう一歩、先へというのは難しかったです。
最終周までは先頭でいけると思っていて、結果的には無理だったんですが、そのあたりは、
今後、克服できたらと思います」と話した。

樋口は、「冬季は、ウエイトトレーニングをメインにして、基礎をしっかり固める
練習をしてきました。今年3月からようやく走りの練習に切り替えています」と説明。
高速域の走りに、まだ体が馴染んでいないが、残り1周からは鈴木の追従を許さなかった。

1500m決勝
1位 樋口政幸 3分15.89
2位 鈴木朋樹 3分16.67
3位 山本浩之 3分16.92

男子(T54)800m決勝 樋口政幸選手(写真右)、鈴木朋樹選手(写真左)

男子(T54)800m決勝 樋口政幸選手(写真右)、鈴木朋樹選手(写真左)

競技2日目の800m決勝は、2レーンでスタートした樋口が序盤から先頭を取った。
1周目は生馬知季選手が外側から上がって積極的に前へ出たが、2周目残り200mからは、
樋口と鈴木の勝負。樋口が鈴木を振り切ってゴールした。

樋口は、「スタート位置が内側だったので、集団の先頭をとっていきました。
駆け引きに入らず、先頭でいけるだけいきました。朋樹がラスト200で仕掛けてきましたけど、
なんとか全力で走って勝つことができました」と話した。

男子800m(T54)
1位 樋口政幸選手 1分41.03
2位 鈴木朋樹選手 1分41.28
3位 渡辺勝選手  1分42.15
4位 山本浩之選手 1分43.50
5位 生馬知季選手 1分44.32

山本浩之選手(写真右から2人目)

山本浩之選手(写真右から2人目)

車いすマラソンでリオ・パラリンピック日本代表候補の推薦内定を得ている
山本浩之選手(Team Heart Space)は、トラック種目にも出場して、
リオへ向けた調整をしている。レーサーのポジションはおおむねつかめてきているという。

女子(T53) 中山和美選手

女子(T53) 中山和美選手

車いす女子(T53)の中山和美選手(アクセンチュア)は、400mで1分01.48、
800m2分06秒52だった。

「今回の400mは現状把握をするレースだったので、よかったと思います。
もう少し伸びることができるかなと思っていたのですが、800mは2分06秒かかってしまい、
最高速度も上がりませんでした」と中山。
今年3月に、レーサーをアルミからカーボンの素材のものに変更。
新しいレーサーでスタートのコツをつかんできているという。
後半200mからの走りの伸びが課題と考えている。

(取材・撮影:河原由香里)