優勝した女子・土田和歌子選手(写真提供(C)東京マラソン財団)

優勝した女子・土田和歌子選手(写真提供(C)東京マラソン財団)

東京マラソン・車いす男子は、洞ノ上浩太選手(41歳)が3位(日本人1位、記録1時間26分01)に入り、リオ・パラリンピック日本代表に推薦されることが内定した。女子は土田和歌子選手(41歳)が1時間41分04で優勝し、リオへの切符をつかんだ。

今年の東京マラソンは、リオ・パラリンピックの車いすマラソン日本代表選考会を兼ねていた。車いす男子の推薦条件は、総合3位以内、日本人1位、1時間28分30秒以内であること。女子の推薦条件は1時間46分00秒以内となっていた。

男子のレースは、洞ノ上選手、副島正純選手(45歳)、山本浩之選手(49歳)の国内ベテラン勢に、海外の強豪クート・フェンリー選手(34歳、オーストラリア)、エルンスト・バンダイク選手(42歳、南アフリカ)、若手の西田宗城選手(31歳)、鈴木朋樹選手(21歳)、久保恒造選手(34歳)が先頭集団を形成して進んだ。

大きな動きがあったのは25キロを過ぎ、浅草の雷門付近だ。
洞ノ上とクートが前に出て、引き離しにかかった。しかし、21歳の鈴木朋樹、エルンストが追い上げを開始。副島、西田も続いて、洞ノ上とクートを再び、集団に吸収。トップ争いは、最後までもつれるかたちとなった。

東京マラソンのコースは、ゴールの手前で広い道から狭い道に入る。車いすの場合、広い道から狭い道に入った時の位置取りと、ラストスパートで必要になるスプリント力で勝敗が決まるといわれている。この勝負どころをつかんで優勝したのが、オーストラリアのクートだった。2位に南アフリカのエルンスト選手、3位に洞ノ上選手が入った。

男子・2位のエルンスト選手(右)、3位の洞ノ上選手(左)

男子・2位のエルンスト選手(右)、3位の洞ノ上選手(左)

■男子・洞ノ上 リオへの推薦条件「順位」のみを意識して臨む

日本人1位となった洞ノ上選手は、「総合3位」「日本人1位」「1時間28分30秒」のリオ・パラリンピック日本代表への推薦条件のうち、順位のみを意識してレースに臨んでいた。

「自分はいろいろなことを考えすぎると、力を発揮できないタイプです。リオへの推薦条件は3つありましたが、このうちタイムは考えないようにして走りました。タイムを気にせずに海外勢と争うことで、結果として、タイムは必ずついてくると確信していました。それがうまくはまって、今はほっとしています」と洞ノ上。

「(リオパラリンピック日本代表の推薦が内定したことについて)今は、ほっとしています。リオへのスタートラインに立てました。これから一つ一つ積み重ねて、メダルをゲットしたいと思います」と語った。

リオ・パラリンピック日本代表への推薦が内定した洞ノ上は、「リオへのスタートへ立つことができました」と話した。

リオ・パラリンピック日本代表への推薦が内定した洞ノ上は、「リオへのスタートへ立つことができました」と話した。

男子・優勝したクート選手

男子・優勝したクート選手

優勝したクート選手は、「このレースで勝つことができて、光栄に思います。副島選手、洞ノ上選手、21歳の鈴木選手、素晴らしかったです。特に、洞ノ上選手は今日、一番のライバルになりました。このコースは最後の500mで広い道から狭い道へ入ってきます。2回のカーブを経てフイニッシュしますが、最後のカーブに最初に入った選手が勝つと考えていました」と話した。

さらに、「今大会は、日本人選手にとってはリオ・パラリンピックの代表選考がかかっていたため、選考に関係のない海外選手のほうが有利だったと思います。来年、2017年の東京マラソンこそ、本当に見どころがあるレースになるでしょう」と付け加え、次回への抱負ともとれるコメントをのこした。

レースディレクターをつとめた副島正純選手

レースディレクターをつとめた副島正純選手

レースディレクターを務め、男子4位の副島正純選手は、「選手目線でいうと、負けたことはすごく悔しいです。ただ、レースとしては、これまでと違ったかたちになりましたし、前半は、若手の西田、鈴木、吉田が攻めてくれました。僕も走っていて、楽しかったです」と話した。

【車いす・男子】結果
1位 クート・フェンリー(オーストラリア)1時間26分00
2位 エルンスト・バンダイク(南アフリカ)1時間26分01
3位 洞ノ上浩太 1時間26分01
4位 副島正純 1時間26分02
5位 鈴木朋樹 1時間26分11
6位 西田宗城 1時間26分43
7位 山本浩之 1時間29分13
8位 久保恒造 1時間31分25

リオ・パラリンピック日本代表への推薦が決まり、「ほっとしています」と土田

リオ・パラリンピック日本代表への推薦が決まり、「ほっとしています」と土田

■女子9連覇の土田選手 「ここで、いくしかない」とタチアナを振り切る

女子は、前半から、土田和歌子選手(41歳)とアメリカのタチアナ・マクファーデン選手(26歳)の勝負となった。

「タチアナ選手と一緒に走っていて、彼女にはスプリント能力、持久力もあるのを感じました。2人で1キロごとに小刻みにローテーションして走っていくなかで、彼女がスタミナがあるのも知り、“このなかで、どうしたら勝てるのか”を必死に考えながらレースをしていきました」と土田。

勝負をかけたのは、36キロ付近、佃大橋だった。
「佃大橋から一気に下り坂で、左に曲がってゴールにはいっていくんですが、そこが最後の勝負どころだと思いました。勝負どころは、そこしかなかった。それしかできなかったと思います」。

土田は、佃大橋の登っていた時、瞬時に判断した。
「ここで、いくしかない」。
飛び出して、タチアナ選手を振り切った。

土田は、リオ・パラリンピック日本代表の選考大会となっていた2015年の大分国際車いすマラソンで体調不良により、途中棄権。今大会での日本代表内定をねらっていた。緊張感の高いレースで強豪タチアナに勝利したことは、リオでの活躍を期待させるものになった。

【車いす・女子】結果
1位 土田和歌子 1時間41分04
2位 タチアナ・マクファーデン(USA) 1時間41分14
3位 中山和美 1時間56分58
4位 アマンダ・マグロリー(USA) 2時間10分55

(取材・撮影:河原由香里)