写真提供 日本パラサイクリング連盟/練習中の鹿沼由理恵選手(右)。パイロットは8月のロード世界選手権でペアを組み、金メダルを獲得した田中まい選手

写真提供 日本パラサイクリング連盟/練習中の鹿沼由理恵選手(右)。パイロットは8月のロード世界選手権でペアを組み、金メダルを獲得した田中まい選手

 鹿沼由理恵選手は元クロスカントリースキーヤーで、2010年にはバンクーバー冬季パラリンピックの出場経験もある。だが、2014年のソチ・パラリンピックに向けた練習中の事故で左肩を負傷。ストックワークに支障が出て、スキー競技を断念した。

 その後、パラサイクリングと出会い、転向して2年目の今年、地道な練習が一気に開花した。4月のトラック世界選手権ではパシュートで銅メダル、7月のワールドカップではロード・タイムトライアルで銀メダル、そして8月のロード世界選手権ではタイムトライアルでとうとう金メダルを獲得したのだ。

 世界戦での3つのメダルを手に、鹿沼選手はアジアでの絶対女王をめざして韓国・仁川へ向かう。出場種目はトラックとロードで2種目ずつ、計4レースを予定している。
「アジアパラ競技大会は、パラサイクリングの日本代表として初めての総合大会出場となります。トラックとロードの両種目がある大会は初めて (*) なので不安もありますが、レース一つひとつ気持ちを込めて、全力で走りきりたいと思う」と鹿沼選手は意気込む。

 パラサイクリングで視覚障害のある選手はパイロットと呼ばれる晴眼者とペアを組み、二人乗りのタンデム自転車の後席に乗って、前席のパイロットと息を合わせて競技する。鹿沼選手は今回のアジアパラ大会を沼部早紀子パイロットとともに戦う。

 「トラックの短距離種目を得意とする沼部選手と国際大会で走るのは初めてです。長距離系が好きな私とは脚質が違いますが、お互いの持ち味を活かし、励まし合いながら走りたいと思います。現地での練習で、どれだけコンビネーションを築けるかも楽しみです」
 
 大会まであとわずか。やるべきことはやってきた。あとはもう一度、自分自身と向き合うだけだ。
「最大のライバルはスタートするまでの、弱い気持ちの自分です。そんな自分を打ち消せるよう、公式練習からレース展開をイメージして、自分を信じてスタートラインに立てるよう取り組んでいきたいと思います。スタッフ・メカニック、パラサイクリングの仲間、応援してくださっている多くの方、大会組織委員会の方、そして共に走るパイロットに感謝し、風を切って韓国を走り抜きたいと思います」

*自転車競技は一般に、ロード種目とトラック種目をそれぞれ別々の大会として開催することが多い。

(取材・文/フリーライター星野恭子)