世界新記録をマークしたマルセル・フグ選手

第40回記念大分国際車いすマラソン(11月21日)の男子マラソン(T34/T53/T54クラス)で、マルセル・フグ選手(スイス、35歳)が1時間17分47の世界新記録で優勝。2位の鈴木朋樹選手(27歳)も1時間18分37で日本新記録をマークした。

車いすマラソン男子の世界記録は20年以上、更新されていなかった。これまでの世界記録は、ハインツ・フライ選手(スイス)が、1999年の第19回大分国際車いすマラソンで出した1時間20分14秒。この壁は高く、選手たちの前に長年、そびえ立っていた。

壁を突破する契機の一つとなったのは、コースの変更だ。
大分国際は好記録が出やすいコースとして知られており、2019年には女子マラソンの世界新記録が出ている。今大会ではコースが一新され、従来よりもさらに直線中心のコースなった。また、レース当日の天候は晴れ、風も少なく、絶好のマラソン日和。スタート前から記録更新への期待は高まっていた。

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先頭がマルセル、その後ろに付いて走る鈴木

レースは序盤から、マルセルと鈴木が前に出た。2人は記録更新を狙うハイスピードで、後続の選手たちとは別格の走りを展開。37キロ地点で、マルセルが前に出る形となり、鈴木を突き放した。

世界新記録を樹立したマルセルは、「今、この瞬間の気持ちを表現するのは難しいです。すごく疲れていますが、すごく嬉しく、信じられない気持ちです。コンディションは良かったですし、コースも良く、世界記録更新を狙えたのですが、まだ信じられません」と話した。

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圧巻の走りで、記録を更新


2位の鈴木の記録も従来の世界記録を上まわった。また、2013年に洞ノ上浩太がソウルで出した日本記録(1時間20分52)を塗り替えた。
鈴木は、「この日本記録更新は、やろうと思ってできることではないと思っています。そのチャンスを掴みとれたことは本当に嬉しいです」と話した。マルセルとの実力差は認識しており、今大会でもマルセルの後ろについて走る形となったため、勝負ができたとはいえないと説明。次のパリ・パラリンピックを見据え、力を付けていきたいとした。

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日本新記録の鈴木

(取材・撮影:河原レイカ)