大会レポート 第27回 全日本視覚障害者柔道大会

男子66kg級決勝-廣瀬-左-と藤本-右

第27回全日本視覚障害者柔道大会が11月25日(日)、講道館で開催された。
全日本視覚障害者柔道大会は、年に1回開催されている国内大会。今年の大会は、ロンドンパラリンピックに出場した日本代表選手、選考会で敗れて日本代表になれなかった選手の対戦もあり、今後に向けて選手同士が互いに刺激をしあう場となった。

■柔道を楽しめた

男子66kg級の決勝は、ロンドンパラリンピックに出場した廣瀬誠選手と,日本代表選考会で廣瀬に敗れてロンドンへの切符を逃した藤本聰選手の対戦となった。
互いに譲らない展開で,延長戦の末、藤本が判定で勝利し,2年ぶりに優勝した。
「北京大会以降の4年間、結構ストイックにやってきて、1つ1つの試合が重かったのですが、今回は、柔道を楽しんでできました」
試合後、藤本はこう語った。
2008年開催のパラリンピック北京大会以降,男子66kg級では,藤本と廣瀬が日本代表の座を争うこととなった。
全日本視覚障害者柔道大会では、第24回大会(2009年)は廣瀬,第25回大会(2010年)は藤本、第26回大会(2011年)は廣瀬が優勝している(第26回大会は藤本は出場していない)。
全日本視覚障害者柔道大会は,IBSA世界選手権大会アジアパラゲームスなど国際大会の日本代表選手の選考を兼ねる場合もあり、ここ数年は、藤本にとっても、廣瀬にとっても緊張感の高い大会だったといえる。
ロンドンパラリンピックを終えて迎えた今大会は、国際大会の日本代表選考が掛かっていなかった。このため、パラリンピック日本代表選考会の会場に漂っていたようなピリピリとした空気はなかった。
大きな重圧から解放されている今、ライバルとの対戦でも、柔道を「楽しむ」気持ちの余裕を持てる時期なのかもしれない。

延長戦で藤本-右-が判定勝ち
延長戦で藤本-右-が判定勝ち

■負けるまで続ける

男子73kg級優勝-笑顔の高橋
男子73kg級優勝-笑顔の高橋

男子73kg級は,ロンドンパラリンピック5位の高橋秀克選手が5連覇を達成した。
優勝はしたものの、高橋は、今大会の試合内容に満足はしていない。
ロンドンパラリンピックが終わったことで、一区切りがついた気持ちがあり、練習は続けていたが、試合で思うように体が動かなかったという。
高橋は、今後の目標について、「負けるまでは続けようかなと思っています。大きな目標はないですけど柔道は好きですし、負けるのは嫌なので」と話した。

■強くなりたい

女子57kg以下合同優勝の田中-右-撮影-河原
女子57kg以下合同優勝の田中-右-撮影-河原

女子57kg以下合同は、田中亜弧選手が優勝した。
田中は、52kg級でロンドンパラリンピック出場を目指したが半谷静香選手に敗れて、出場できなかった。
今大会は、半谷が欠場したため、ライバルとの対戦は実現しなかったが、田中は次の国際大会に向けてスタートを切っている。
「ロンドンパラリンピック日本代表の選考会の結果は最低最悪で、もう一回、気持ちを引き締めました。次のパラリンピックのために練習、練習だと思っていました」と田中。
今大会では、技を掛けようと思っても十分に掛けきれていない場面があったと振り返る。大きな大会の前になるといろいろと考えてしまい、気持ちが折れてしまうことがあることも課題だという。
「それを乗り越えて、自信をつけられるようにしたいです」。

■やっぱり柔道が好き

団体戦優勝の徳島県チーム
団体戦優勝の徳島県チーム

試合は、勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。
悔しさから「強くなりたい」と思えば、練習へのモチベーションは高まる。
想定どおりの試合ができなければ、課題を克服しようと努力することにもなる。
「やっぱり、柔道が好きだ」。
ライバルと対戦する場は、改めて柔道と向き合い、心の根底にあったそんな思いを確認する機会なのかもしれない。

【第27回 全日本視覚障害者柔道大会・結果】
【男子】
優勝
60kg級 平井孝明選手
66kg級 藤本聰選手
73kg級 高橋秀克選手
81kg級 初瀬勇輔選手
91kg級 加藤裕司選手
100kg級 松本義和選手
100kg超級 正木健人選手
【女子】
優勝
57kg級以下合同 田中亜弧選手
【都道府県対抗団体】
優勝 徳島県

 

取材/執筆 河原由香里
写真協力