写真左から喜納選手、鈴木選手、洞ノ上選手

写真左から喜納選手、鈴木選手、洞ノ上選手

今年で14回目となる「東京マラソン2020」を3月1日に控え、車いすの部に出場(男子15人、女子3人)する招待選手会見が2月28日、東京都内で開催され、鈴木朋樹(トヨタ自動車)、洞ノ上浩太(Yahoo!)、喜納翼(タイヤランド沖縄)の3名が登壇し、目標などを話した。

鈴木は、昨年4月の世界選手権で銅メダルを獲得し、東京パラリンピック代表に内定している。4月に出場予定のワールドカップにピークを合わせているが、今大会も、「しっかりと走れる準備はしている。積極的なレースを心掛けて、楽しいレースだったと思えるように頑張りたい」と意気込みを口にした。

洞ノ上は東京マラソン2015の優勝者で男子日本記録保持者(1時間20分52秒)でもある。今大会に向けてスピード練習を積み、調子を合わせてきたと言い、「きつい練習をこなしてきたので、あとは自分の力を出すだけ。楽しむ気持ちで走れば、ベストが出せるのではないかと思う」と自信を示した。

喜納は昨年11月の大分国際車いすマラソンで女子日本新記録(1時間35分50秒)を樹立するなど好調を維持。今大会に向けても、「体調はいい。暖冬でもあり、冬場にしっかり走り込めた。今年は天気も良さそうで、いい環境のなかで走れそう。タイムも出したいし、自分が楽しむことを目指して走りたい」と目標を話した。

会見に先立って主催者からは、元々、国内外から男子20人、女子10人がエントリーしていたが、そのうち男子5人、女子7人が出場辞退したと発表された。ほとんどが新型コロナウイルスの影響によるもので、アメリカ選手(男子1、女子3)は同国パラ陸上競技連盟からの指示による欠場という説明もあった。

鈴木は、「海外の強い選手と戦えるのはマラソンの楽しみ。欠場は残念だが、海外選手がいないから手を抜くわけでなく、いないからこそできるレース展開もあると思う」。洞ノ上も、「有力選手欠場は残念だが、自分としてはできることをやってきた。海外選手がいないとレース展開も変わると思うが、心の準備はしている。あとは、走るだけ」と決意を示した。

副島正純車いすレースディレクターは、選手のモチベーションアップと、ここ数年停滞している大会記録更新を期待して、「今年は3つの仕掛けを用意した」と話した。1つは、アボットワールドマラソンメジャーズの取り組みでもある、「車いすボーナスポイント」で、予め設定した400m区間(37.1㎞地点~37.5㎞地点)で最速タイムを記録した男女各1名にボーナスポイント(8点)が与えられるというもの。トラック種目の400m走をメインにする鈴木は、「400mに特化した練習をしているのでポイントを獲りに行きたい」と意欲を見せた。

2つ目は東京マラソン独自の仕掛けで、37.5㎞地点通過の設定タイム(男子1時間15分、女子1時間28分)をクリアした男女各上位3名までに賞金(15万円、10万円、5万円)を贈るというもの。このタイムは現在の大会記録(男子1時間26分00秒、女子1時間41分04秒)の更新を想定して算出されているという。

洞ノ上は、「自分は(設定タイム)より速いタイム設定を考えている。そのタイムで通過したい」と積極的な走りを約束。

3つ目の仕掛けは、男女各8位までに授与されるレース賞金の倍増で、例えば、優勝賞金は100万円から200万円に引き上げられた。喜納は、「賞金2倍は選手としてはモチベーションが上がる。目標タイムは1時間40分00秒。パンクに気を付けて、コースレコード更新も目指し、目標を持ってしっかり走りたい」。

1時間22分55秒の自己ベストをもつ鈴木は、今大会は1時間24分00秒を目標に掲げ、「東京マラソンでは金メダルを獲れていないので、目指したい。レースプランは立てず、スタートしてから状況を見て積極的に走りたい」。洞ノ上は目標タイムを1時間23分59秒とし、「コース前半の下りは苦手だが、そこを耐えて先頭集団に食らいついていきたい」と、3人とも力強く快走を誓った。

なお、今年の東京マラソンは、新型コロナウイルスの影響により一般ランナーの部を中止し、エリートマラソンと車いすの部のみで規模を縮小して実施される。選手会見の前に主催者である東京マラソン財団の伊藤静夫理事長が挨拶に立ち、さまざまな対策を講じたが、安全・安心の大会運営の視点から、規模縮小を決定したと改めて説明。「苦渋の決断だった」と明かし、走れない一般ランナーのためにも、「エリート選手には思う存分、実力を発揮し、日本を少しでも元気にしてほしい」とエールを送った。

レースは東京・新宿区の東京都庁前をスタートし、浅草や門前仲町、品川などを巡り、東京駅前にフィニッシュする42.195kmのコースで行われる。男女車いすの部は午前9時5分、男女マラソンエリートは午前9時10分にスタートする。

車いすレースの模様は、フジテレビNEXT(CS)で生中継されるほか、インターネットで無料LIVE配信される予定となっている。

▼東京マラソン公式サイト
https://www.marathon.tokyo/

取材・執筆:星野恭子
写真提供:吉村もと