和田伸也選手(T11クラス)とガイドの中田崇志さん(2019パラ陸上世界選手権) (写真提供:小川和行)

和田伸也選手(T11クラス)とガイドの中田崇志さん(2019パラ陸上世界選手権)
(写真提供:小川和行)

【はじめに】
2020年のオリンピック・パラリンピックの開催が近付いてきました。
テレビや新聞、インターネットのメディアを通じて、障がい者スポーツの大会や選手
について紹介されることが、以前より増えています。
「パラリンピックの競技・種目を観てみたい」
「パラリンピックの選手を応援したい」
そんな思いを持っている方も増えていると感じています。
障がい者スポーツの各競技にも、さまざまなルールがあります。
「クラス分け」もその一つですが、実際に競技を観戦したことのない方にとっては、
馴染みがないものです。

「はじめてでもわかる障がい者スポーツのクラス分け 視覚障がい編」
では、視覚障がい者選手に対するクラス分けの国際資格を持つ清水朋美先生
(国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部長)の監修のもと、
Q&A形式で、視覚障がいのクラス分けについて分かりやすく解説していきます。

【1】障がい者スポーツの「クラス分け」とは、何ですか?
障がい者スポーツ情報サイト「パラスポ!」を閲覧してくださった読者から、
次のような質問がメールで寄せられました。
「パラリンピックに興味があるので、インターネットでいろいろ調べていますが、よく分からないことがあります。たとえば、陸上競技の記事で、選手の氏名と一緒に、T11と書いてあります。伴走の人が一緒に走っている写真があるので、視覚障がい者の選手だと思うのですが、このT11とは、何を示しているのでしょうか?伴走者が必要ということですか?」

障がい者スポーツのルールの一つとして、「クラス分け」があります。
ご質問にある「T11」は、視覚障がいの選手のクラス分けを示すものです。
一口に障がいといっても、障がいの種類や程度は、個人によって異なります。
身体障がい者といっても、義足を使う人、車いすの人、視覚障がいのある人、さまざまです。
視覚障がいをみても、目の前にいる人の顏が「ほとんど見えない」という人もいれば、
「顏の形は、だいたい見える」という人もいます。
スポーツ競技を行い、勝敗をつけるうえで、障がいの種類・程度による有利・不利のないように、選手をグループ分けする仕組みが「クラス分け」です。

今回は、視覚障がいのクラス分けについて詳しく解説していきたいと思います。
視覚障がいは、3つのクラスに分けられます。
障がいのクラスは、アルファベットと数字の組み合わせで示されています。
アルファベットは競技や種目を意味し、数字は1の位が小さいほど、障がいの程度が重いことを示しています。

■視覚障がいのクラスの例
ブラインドサッカー B1、B2、B3
陸上(トラック競技=T)T11、T12、T13
陸上(フィールド競技=F)F11、F12、F13
水泳(自由形・背泳ぎ・バタフライ=S)S11、S12、S13
水泳(平泳ぎ=SB)SB11、SB12、SB13
水泳(個人メドレー=SM)SM11、SM12、SM13
上記の3つのクラスは、競技や種目によって表し方が異なりますが、各クラスの内容は同じになります。
つまり、ブラインドサッカーでB1になる人は、陸上のトラック種目をする時にはT11になります。

分かりやすく数式のようにすると
B1=T11/F11=S11/SB11/SM11
B2=T12/F12=S12/SB12/SM12
B3=T13/F13=S13/SB13/SM13
となります。

視覚障がいのクラスはすべての競技において共通のクラス分けを行っています。
クラス分けでは基本的には3つのクラスのうち、選手がどのクラスに該当するのかを確認します。
例えば、陸上競技では、T11/F11、T12/F12、T13/T13のいずれかのクラスに該当する選手は、国際大会へ参加することが可能です。T11/F11~T13/F13には該当しない視覚障がい者は、T14/F14となり、国際大会への参加はできません。

つまり、B1~B3(陸上競技はT11/F11~T13/F13)の3つのクラスどのクラスにも該当しない選手は、NE(不適格)ということで、国際大会には参加することができません。、なお、馬術の場合は、視覚障がいは2つのクラス(グレードⅣ、グレードⅤ)に分けられています。B1=グレードⅣ、B2=グレードⅤとなり、B3はNEに相当します。

クラス分けの結果により、種目によっては競技上のルールが多少異なります。

陸上や水泳のように、個人種目の場合は、障がいのクラス別にレースが行われます。
例えば、陸上5000m(T11)のレースは、障がいのクラスがT11となった選手が出場します。
ブラインドサッカーのなかでも5人制サッカーやゴールボールでは、目にアイマスクやアイシェードを着用することがルールになっており、視覚的な条件をそろえて対戦します。

視覚障がい柔道は、体重の階級別で競います。
例えば、男子60kg級の選手で、全盲(B1)の選手と、弱視(B2)の選手が対戦することもあります。
ただし、視覚障がい者柔道の選手も、国際大会ではクラス分けがあります。

視覚障がいの競技・種目は、B1~B3のいずれかのクラスに該当しない選手は
国際大会には出場することができませんので、クラス分けは必須となります。

陸上や水泳などの個人競技で視覚障がい者の選手を観るときには、
まず、「視覚障がい者は3つのクラスに分けられて、競技している」
ということを念頭に観戦すると分かりやすいでしょう。

(改訂2019年12月)
(構成・執筆:河原レイカ)
(監修:清水朋美・国立障害者リハビリテーションセンター病院)