高田千明選手(T11クラス)、ガイド大森盛一さん (2019パラ陸上世界選手権)(写真提供:小川和行)

高田千明選手(T11クラス)、ガイド大森盛一さん
(2019パラ陸上世界選手権)(写真提供:小川和行)

【連載第4回】クラス分けには、どんな書類が必要ですか?
これから様々な国際大会に出場し、実力をつけて、2020年の東京パラリンピックでは表彰台に上がりたい――。
そんな夢をもって、練習に励んでいらっしゃる方がいることと思います。今回は、初めて国際大会に出場する選手からの質問です。

「私は、これから国際大会に出場したいと考えている選手です。クラス分けの認定を初めて受けることになりますが、大会組織委員会宛てに、事前に提出が必要な書類があると聞きました。どんな書類を用意したらよいのでしょうか?。また、注意が必要なことがあったら教えてください」

国際大会に出るために必要な書類として、まず、MDF(MEDICAL DIAGNOSTICS FORM)があります。
MDFを眼科医に作成していただかなくてはなりません。

資料1:視覚障がい者のクラス分けで必要になるMDFの例 (Medical Diagnostics Form for athletics with visual impairment)

資料1:視覚障がい者のクラス分けで必要になるMDFの例
(Medical Diagnostics Form for athletics with visual impairment)

MDFには、氏名、性別、生年月日、住所、国籍、競技など選手の基本的な個人情報のほか、医学的な情報が記載されていなければなりません。医学的な情報としては、視覚障がいの原因となった病気に関する情報や、視力と視野の検査結果等が求められています。
視力は、ランドルト環を使う検査結果です。視野は、ゴールドマン視野計(Ⅲ/4eを基準)を用いた検査結果が必要です。
(視力と視野の解説は、本連載第2回に掲載)

ゴールドマン視野計での検査は、眼科によっては対応不可のところも多く、事前に確認が必要です。
どこでMDFを作ってもらえばよいかわからない場合には、各競技団体の眼科担当医へおたずねください。
また、網膜に関係する視覚障がいの場合には、ERG(Electroretinogram:網膜電図検査)、VEP(Visual evoked potentials:視覚誘発電位検査)、OCT(Optical coherence tomography:光干渉断層計検査)の結果が重視されています。これらも、設備の整っている病院等へ行って検査を受ける必要がありますが、事前に予約をとっても検査を受けるまでに時間がかかることがあります。予約から検査を受けるまでに半年間ほど要する場合もありますので、これらの検査に関しても、ご不明な点は各競技団体の眼科担当医までお問い合わせください。

資料2:MDFに記載されている情報が、クラス分けにおいて重要になる

資料2:MDFに記載されている情報が、クラス分けにおいて重要になる

MDFには、眼科の検査結果を資料として付けて提出することが求められています。
前回(連載第3回)ご紹介したように、資料は英語表記であること(検査結果が日本語印字の場合は、日本語を消さずに英語の対訳をつけること)等、適切な形式になっているかを確認していただきたいと思います。組織委員会へ最終的に提出する前に、各競技団体の眼科担当医に最終確認をしてもらったほうがより安心だと思います。

事前にしっかり提出していたとしても、MDFと検査資料等はコピーをとっておき、競技大会の会場に携帯するようにしましょう。
IPC(国際パラリンピック委員会)やIBSA(国際視覚障がい者スポーツ連盟)は、クラス分けのために事前に提出されたMDFや検査資料等のデータベースを作成しており、MDFと検査資料を事前に提出すると、このデータベースにアップロードされます。アップロードされたことで安心してしまい、国際クラス分けの会場にMDFや検査資料を持参せず、手ぶらで来る選手・スタッフがいますが、クラス分け会場のインターネット環境によってはデータベースにつながらない場合があり、MDFの確認ができなかったり、かなり長い時間がかかる場合もあります。

国際大会に出場する際には、MDFと検査資料のコピーを必ず、携帯し、競技生活を継続する間はファイリングし、国際クラス分け会場に持参する習慣をつけておきましょう。
もう一つ、注意を促したいのは、国内で開催される国際大会で、パスポートを持参することです。選手個人を証明するために、国内でもパスポートが必要になります。

クラス分けのために事前に資料を整えることは、手間がかかるものだと感じた方もいるかもしれません。
しかし、MDFや検査資料等を適切に提出することは、結果として、競技大会前のクラス分けにかかる時間を短縮することにつながり、トラブル等の発生を避けることになります。どこの眼科でもそうですが、MDFのための検査はすぐにできる内容ではありません。必ず時間にゆとりをもって検査を受けることができるように、早めに眼科担当医に相談できるように気を付けましょう。

参考資料
国際視覚障がい者スポーツ連盟(IBSA)のMDF
http://www.ibsasport.org/news/files/1129-1-Medical-Diagnostics-Form-2017-with-instructions.pdf
パラ陸上競技連盟(WPA)のMDF
https://www.paralympic.org/sites/default/files/document/180308112724077_2017_11_29+VI+MDF.pdf

(改訂:2019年12月)
(監修:清水朋美・国立障害者リハビリテーションセンター病院)
(構成・執筆:河原レイカ)