日本代表選考の合宿に参加した選手たち。この中から国際大会に出場する12人が選ばれる

日本代表選考の合宿に参加した選手たち。この中から国際大会に出場する12人が選ばれる

日本車椅子バスケットボール連盟は1月11日から13日、国立障害者リハビリテーションセンターで、女子の日本代表選手選考を兼ねた合宿を行った。個々の選手の基礎的な能力を確認し、コミュニケーション能力やチームプレイなどもみて、2014年の日本代表選手を選ぶ考え。日本代表選手は2月半ばに発表され、6月の世界選手権、10月のアジアパラゲームスに出場する。
現在、女子チームのキャプテンを務めている添田智恵選手と、橘香織ヘッドコーチに話を聞いた。

■テーマは「考えるバスケ」

一選手としては、得点に絡んでいきたいと語った添田智恵選手

一選手としては、得点に絡んでいきたいと語った添田智恵選手

――日本代表女子チームは、どのような目標を掲げていますか。

〇添田智恵キャプテン(以下、添田)

今年6月に開催される世界選手権でトップ3に入ること、メダル獲得を目指してがんばっているところです。世界選手権は、2016年リオ・パラリンピックのアジア・オセアニア地域からの出場国の枠数獲得に影響しますので、日本チームとして上位に食い込みたいと思っています。

チームで、今、取り組んでいるのは「考えるバスケットボール」です。
例えば、スペースがあるとき、選手はそこへ行ってしまいがちなんですが、空いているからといってスペースに行くのがいいのか、それとも行かないほうがいいのか。ボールや相手チームの選手の位置などを考えて、それを選択していくということです。選択肢を増やすことですね。

以前に比べて、車椅子の性能が良くなっていますので、選手が動けてしまうんです。動けるので、空いていたら行ってしまうんですね。でも、それは車椅子をコントロールできていないということでもあります。車椅子をコントロールできないと、「考えるバスケ」はできない。走ったり、パワーをつけることも最低限必要ですが、「考えるバスケ」をどれだけ緻密にできるかですね。

――海外勢との差をどのように考えていますか?

〇添田

環境の差は大きいと思います。バスケだけで生活ができている国と比べると、どうしてもハンデはありますね。それを言い訳にしたくはないので、質を高めた練習をしていくしかないですね。
ただ、1人が頑張ればどうにかなるものではないですし、スポーツに対する理解がどれだけあるか、組織ぐるみのサポートがどれだけあるかは大きいと思います。


――2020年パラリンピック東京開催が決まったことで、支援や強化が手厚くなることがあるかもしれません。どのような支援を希望しますか

〇添田

現在の日本チームの中でも、スポンサーがついている選手はいます。ただ、スポンサーがついて練習ができる選手と、そうでない選手のギャップは大きいです。国内でのギャップを少なくしたいということはありますね。
選手ばかりにフォーカスが当たりがちなんですが、トレーナーやマネジメントができる人材の育成も大切だと考えています。
選手だけでなく、スタッフも含めた1つのチームをバックアップしてもらえるといいですね。


■考えたことを実行につなげる

考えたことを実現できる選手を育てたい。橘香織ヘッドコーチ

考えたことを実現できる選手を育てたい。橘香織ヘッドコーチ

――今回の合宿は日本代表選手の選考を兼ねているそうですが、どのような点を観て選考されるのですか。

〇橘香織ヘッドコーチ(以下、橘)

1日目は、メディカルチェックと、20mスプリント、基本的なパス、持久走など、個々の能力を把握しました。2日目と3日目は1対1、3対3、5対5などをやってみて、チームでプレイした時の能力をみていきます。
単に体の能力だけではなく、チームに入った時のコミュニケーション能力、チームメイトに目を配る能力、難しいゲームでも最後まで諦めないメンタル面の強さなどもみています。


――選考した選手たちで、どのようなチームづくりを進めていきますか。

〇橘

日本人は、体格的に有利なところは少ないです。これまではスピードで勝負してきたところがあったんですが、今は、海外勢が体が大きいうえにスピードも速いです。スピードだけでは勝てないことが分かっています。

日本チームとして何に活路を見出すかというと、日本人、特に女性は、我慢強く、粘りづよく、頭から入っていくところもあります。そこで、2013年は1年間、「考えてプレーをする」ということをしつこくやってきました。プレーの仕掛け、しくみを考えることです。

たとえば、速攻で、相手チームのディフエンスを置き去りにして、フリーでシュートを打つ攻め方があります。でも、まっすぐ走っていては、相手チームの選手を抜き去ることはなかなかできない。そこで走るコースを変えたり、2人の選手が組んで相手をかわしたり、相手と駆け引きしたりします。

要は、自分たちのシュートの確率をいかに上げて、シュートの回数を増やすか。
相手チームのシュートの確率をいかに下げて、回数を減らすか、です。
「確率×回数」に落とし込んでいくことだと思います。

今年は、考えたことを実行するために、体とメンタル、技術のタフさを追求することをテーマにあげています。「こういうプレーをしたいと分かっているけど、できない」を、「分かっていることを、できる」にしようと思っています。それができるようになったら、来年以降、スピード、精度を上げて、リオまで持っていきたいです。

バスケットボールはサイエンスだと思っていて、成功するときは、その理由があります。
緻密なバスケは日本人の気質に向いていると思いますので、それをうまく使ってやっていきたいです。 (取材・撮影/河原由香里)