合宿では、選手たちの声がコートに響く場面が目立った。声出し、声かけを意識しているようだった

合宿では、選手たちの声がコートに響く場面が目立った。声出し、声かけを意識しているようだった

ゴールボール日本代表・女子チームは1月11日から13日、国立障害者リハビリテーションセンターで強化合宿を行った。昨年までキャプテンだった小宮正江選手が引退し、浦田理恵選手がキャプテンに就いて迎えた初めての合宿。2014年は、6月開催の世界選手権に照準をあわせて、チームの強化を進める。浦田理恵キャプテンと、江黒直樹ヘッドコーチに話を聞いた。

■キーポイントは信頼関係

新しくキャプテンとなった浦田理恵選手(写真・右)

新しくキャプテンとなった浦田理恵選手(写真・右)

――この合宿のねらいを教えてください。また、キャプテンとしてどのような役割を担っていこうと考えていますか。

〇浦田理恵キャプテン(以下、浦田)

今年は6月にフィンランドで世界選手権が開催されます。そこで3位以内に入ると2016年のリオパラリンピックの出場が決まりますので、まずは世界選手権に照準をあわせています。

昨年までキャプテンだった小宮さんが引退されて、私は、この合宿からキャプテンとなりました。チームの底上げをしないと勝利は難しいと思いますし、2012年のロンドンパラリンピックで金メダルをいただいたからこそ、勝つことの難しさを実感しています。「金メダルを獲る」という思いはあるんですけど、簡単には口に出せませんし、大変なことだという意識はありますね。

キャプテンとなったことで、「チームメイトがどういう動きをしているか」とか、「自分がどういう動きをしたらチームがうまくまわるか」というところを勉強させていただける貴重な機会をもらっています。試練だなぁ…と思っています。

今回の合宿に来て、若い選手が頑張って声を出してくれていて、私が頼りないところがあるので助けてもらっていると思いました。これまで、「自分がやらなきゃ」と思っていたのですが、自分が空回りしてたのかなと。

――どのようなチームにしていきたいですか。

〇浦田

一番は、信頼関係ですね。
選手がお互いどれだけ仲間を思いあえるかが、キーポイントになります。選手間もそうですし、コーチとスタッフ、お互いに思いがひとつでないといけないと思います。横のつながりのあるチームを目指して、自分もパーツの1つとして頑張っていきたいです。

選手は異なる地域で生活していますので、普段は、選手のメーリングリストを使って、「これはどうなんだろう?」と問題提起をしたりしています。誰かがメールで問いかけたら、それに対して言葉で反応する。自分が心のなかで思うだけでなく、「分かりました」と言葉で伝える。信頼関係は、そういう基本的なコミュニケーションからのスタートです。

日本の選手は、海外の国と比べて体格差があり、パワーのあるボールを投げれる選手がたくさんいるわけではありません。ディフエンス力がキーポイントだと思います。
自分たちが勝つためには、相手の得点をゼロで抑えるということは最低ラインの条件だと思います。固いディフエンスを、緻密にやっていくことです。海外のチームも日本を研究して、真似をしてくるなかで、自分たちがどう得点をとっていくかですね。

■チーム力を強味に

一丸となって戦えるチームづくりを進めている

一丸となって戦えるチームづくりを進めている

――今回の合宿では、どのようなテーマをもっていますか。

〇江黒直樹ヘッドコーチ(以下、江黒)

小宮が引退しましたので、今回の合宿は、次に出るレギュラー選手の強化です。
ロンドンパラリンピックは、小宮正江、浦田理恵、安達阿記子の3選手で戦ったチームでした。去年1年間は、その次に出る選手たちがいかに成長するかがテーマだったわけですが、まだ、トップ選手たちには届いていない。今年は、勝負の年なので、底上げをしなければいけません。浦田、安達も世界でナンバーワンというわけではありませんから、その2人も強化していかなければいけないです。

選手が、自分たちである程度の応用力をもてるようにしたいです。ゲーム展開によって、自分たちで考え、自分たちの力でゲームを変えていけるようなチームになっていけばと思います。
そのためには、自分たちの状態が分かっていて、相手の状態をみることができ、どれだけ戦えるかを考えていけることが必要です。それができる選手は、まだまだ少ない。先は長いです。
――新しいルールへの対応をどのように考えていますか。

〇江黒

まだ、どうなるか分からないですね。
少し変えるかもしれませんが、日本チームは、確実に自分の位置や方向が分かっていることに重点を置こうと思っています。
日本の選手は体が小さいから、ディフェンスで前に出ればいいのかもしれませんが、その分、受けるボールが速くなったり、バウンドボールに苦戦することも考えられます。戦い方も含めて、いろいろ観て考えていきます。

――日本チームは、どのような点を強みにしていきたいですか。

〇江黒

チーム力ですね。
チーム力が、日本の力。
「仲間」という点に、一番、力を入れています。「1+1」が、3、4、5になると思うし、そこを作っていきますので、それがチームの強味になってほしいと思います。

他国の選手は、体が大きいですし、ボールも速いです。日本の選手は、遅い球でも、その球を使いながら、どうにか得点をうばえる。チーム一丸となって1点をもぎ取りにいく。それが、日本のスタイルなのかなと思っています。信頼関係をつくりあげていくことですね。選手同士もそうだし、コーチと選手もそうですね。

(取材・撮影/河原由香里)