2015ジャパンパラゴールボール競技大会(7月31日~8月2日、足立区総合スポーツセンター)
の3位決定戦で、日本は0対1で韓国に敗れ、4位に終わった。
今大会は、ロシア、トルコ、韓国、日本の4チームが対戦。7月31日から8月1日の2日間で
行われた予選リーグの結果は、1位ロシア(5勝1敗)、2位トルコ(3勝3敗)、
3位日本(2勝3敗1引き分け)、4位韓国(1勝4杯1引き分け)だった。
8月2日の決勝戦は、トルコがロシアを4対3で破り、優勝した。
日本は、これまでチームの主力となってきたベテランの浦田理恵選手、安達阿記子選手を怪我等で
欠き、若杉遥選手(19歳)、欠端瑛子選手(22歳)、天摩由貴選手(25歳)、安室早姫選手(22歳)
の若手4選手でチームを構成して臨んだ。
日本チームにとって、今大会は、若手選手たちがどこまで戦えるのか、力を試される機会だった。
ロシアやトルコのように、体格を活かした力強いボールでの攻撃力を持たない日本チームは、
堅いディフェンスで失点を防ぎ、選手の連携による攻撃で得点をねらうチーム。
予選リーグでは、前半(12分)は互角に戦えていても、後半(12分)に失点を重ねてしまうゲームがあり、
選手たちの間からは、苦しい場面を乗り越えられる『我慢』が課題にあがった。
苦しい場面を耐えて失点を防ぐことができれば、ゲームの流れを引き寄せて主導権を握り、
勝利がみえてくることが明らかになったのが、5対2で勝利した予選リーグ(8月1日)のロシア戦。
逆に、1点を先行され、「勝たなければ」「得点しなければ」という気持ちがマイナスの方向へ
働いてしまったようにみえたのが、3位決定戦の韓国戦だった。
市川喬一ヘッドコーチは、大会終了後、「浦田、安達の2人がいるかいないかが非常に大きいのは事実です。
その2人がいない中で、どこまで勝負できるかが今大会のテーマでした。痛い面もありましたが、
十分、収穫もありました」と振り返った。
若手選手の成長については、「自分たちが何かを変えれば、勝つことができると分かったと思うんです。
心理状況、考え方を変えると変われるということは分かりましたし、負けた試合は裏目のほうが出てしまった
と思うんです。2つの心理を知れたことは大きかったと思います」と話した。
ベテラン選手から言葉で伝えられていてもコートに立って身を持って経験しなければ分からないことがある。
それを今大会で経験できたことは、若手選手にとって大きな意味がある。苦い経験を糧に成長した若手選手の力が、ベテラン選手の力と融合すれば、チームとして一段と強くなれると、市川ヘッドコーチは考えている。
選手たちはそれぞれ、今大会を通して収穫と課題をつかんでいる。
若杉遥選手は、個人の課題として、「もう一人の自分で冷静にゲームをみること」と挙げた。
金メダルを獲得した2012年のロンドンパラリンピック日本代表チームのメンバーである若杉は、
他の若手選手を自分が引っ張らなければならないという思いを持っている。
その思いが空回りしないようコントロールするには、冷静にゲームをみることが必要になる。
若杉は、「主力として戦ってきた浦田選手、安達選手が今大会はいないことで、今までだったら
一番経験がある私が他の選手をひっぱっていかないといけないと思ってしまっていたと思います。
今回はそうではなくて、自分ができることをしようと、周りを見てプレーをすることを考えられた
ことが大きかったと思います」と話した。
一方で、若手選手だけのチームで戦う中で、ベテラン選手に頼っていた自分に改めて気づき、
「頼ってばかりではいけないと思いました。ベテラン選手を一日でも早く追い抜かしてプレーを
することを意識していますので、そこにつなげられる大会でした」と語った。
天摩由貴選手は、2012年のロンドンパラリンピックに陸上の短距離種目で出場した元・陸上選手。
陸上を引退した後、ゴールボールの日本代表チームに入り、経験はまだ少ないが攻撃の一翼を担おうと
練習を積んでいる。
天摩は、個人の課題として、「3日間で7試合がありましたが、自分には投げ続け、受け続ける体力がなくて、
3位決定戦の韓国戦では自分のボールが走っていませんでした。市川コーチのいう“ゴールボール持久力”がないので、これからしっかりつけていきたいと思います」と話した。
今大会、コートの外から日本チームを見守っていたキャプテンの浦田理恵選手は、
「選手たちから自発的な声が出るようになってきたことは、チームとしても成長できたんじゃないかと思います。
日本のチームが勝つ時は、コートの中で会話ができている時なんです。それができてきているというのは、
チームの結束力としても上がってきていると思います」と話し、若手選手の成長を感じている。
一方で、「ミスした時の気持ちの落ちや、波がまだまだあるというのを感じました。コートの中で修正をして点を獲りにいくことが課題だと思います」と話した。
厳しい戦いを勝ちぬくために必要なものは、すぐに手に入るものもあれば、時間がかかるものもある。
頭で理解できていても、ゲームの厳しい場面で実践ができるようになるには、経験がものをいうのかもしれない。
2016年のリオ・パラリンピックへの出場権がかかるアジアパシフィック大会は今年11月に開催予定。
今大会での経験を糧に、若手とベテランの力を融合し、相乗効果を発揮するようなチームをつくれるか。
リオへの切符をつかむため、残り約3カ月、日本代表チームの調整は続く。
(取材・撮影:河原由香里)