視覚障害柔道のリオ・パラリンピック日本代表候補選手選考大会が5月4日、
東京都文京区の講道館で開催され、日本代表候補選手が決定した。
男子は、60kg級 廣瀬誠選手(39歳)、66kg級 藤本聰選手(40歳)、
73kg級 北薗新光選手(24歳)、90kg級 廣瀬悠選手(36歳)、
100超級 正木健人選手(28歳)女子は、57kg級 廣瀬順子選手(25歳)。
このほか、女子は63kg級の米田真由美選手が招待枠で指名されており、
リオ・パラリンピックに出場を予定している。
■互いをよく知るライバル同士の代表争い 男子60kg級
男子60kg級は、平井孝明選手(34歳:熊本県立盲学校)と廣瀬誠選手
(39歳:愛知県立名古屋盲学校)の代表争いとなった。
平井と廣瀬はともに2012年のロンドンパラリンピックの日本代表選手。
平井は60kg級で、廣瀬は66kg級で出場した。ロンドン以降、廣瀬が階級を下げ、
60kg級でリオ・パラリンピックを目指していた。
昨年5月に韓国で開催されたIBSAワールドゲームス(各階級・各国2選手が出場可)
では、ともに男子60kg級に出場し、平井が銀メダル、廣瀬が銅メダルを獲得。
昨年11月の全日本視覚障害柔道大会の平井と廣瀬の対戦は、廣瀬が平井をやぶって
優勝していた。
廣瀬も平井も互いをよく知っている。
日本代表選考で相手に勝つための対策も十分に練って、今大会に臨んでいた。
リオへの切符をかけた対戦は、互いに譲らない展開で、ゴールデンスコア(延長戦)に突入。
廣瀬は、平井の巴投げをかわして、抑え込んだ。
「平井選手は寝技が得意なので、自分の対策としては立ち技で狙っていくつもりでした。
試合がもつれてしまい、延長戦(ゴールデンスコア)に入ってから、平井選手が何回か
巴投げをかけてきたので、それを避けて寝技で獲ろうと考えました。
平井選手は努力を惜しまない選手で、年下ですが尊敬している柔道家の一人。
平井選手の思いを託されたので、リオでは自分自身、家族、平井選手のためにも一つ
でも多く勝って、メダルを獲得したい」と話した。
男子66kg級の藤本聰選手(徳島視覚支援学校)は、アトランタ、シドニー、アテネパラリンピックの3大会で金メダル、北京大会で銀メダルを獲得した実績を持つ選手。ロンドンパラリンピックは、日本代表選考大会で廣瀬誠選手に敗れて出場を逃した。今大会で優勝し、リオで再び、パラリンピックの舞台に立つ。
藤本は、「日本代表選考は一発勝負の怖さがあるので、油断をしないように臨んで、少し硬かったかと思います。去年の9月から柔術を学んでおり、それを活かすことができてよかったと思います。ロンドンパラリンピックに出場できなかった時は、あと4年もあるのかと思っていましたが、強くなりたい一心でやっていたら4年間があっという間でした。リオ・パラリンピックまであとわずかですが、できることはたくさんありますし、怪我には注意をして、最高の準備をしていきたいと思います」と話した。
男子73kg級の日本代表候補選手となった北薗新光選手(アルケア)は、
「支えてくださった方、会社の方、監督、コーチから、おめでとうといわれて
本当に嬉しいです。今日は、練習してきたことを試合で出そうと思って臨みました。
ロンドンパラリンピックに出場した時は大学3年生で、その頃は柔道を中心に
できていました。社会人になって柔道を辞めようか迷った時期もありましたが、
柔道をできる環境をつくっていただきました。リオでは、ぜひ、優勝したいと
思っています」と話した。
男子90kg級廣瀬悠選手(伊藤忠丸紅鉄鋼)と、女子57kg級の廣瀬順子選手(伊藤忠丸紅鉄鋼)は
昨年12月に入籍、それぞれリオへの切符を掴んだ。
廣瀬悠選手は、「2人で勝つことができたのは、2人で練習を続けてこられたことが
結果つながったと思います。自分は接戦になることが分かっていたのですが、
順子さんは力をつけていたので“勝てる”と声をかけていました。
順子さんを含めて、会社の方の声援が聞こえて力になりました。夫婦でパラリンピックに
出場することは珍しいことだと思いますが、注目されるうちに、リオでメダルを獲れるように
2人で頑張っていきたいと思います」とコメント。
廣瀬順子選手は、「試合内容には課題がありますが、2人で勝つことができてほっとしています。
パラリンピックまでに練習して、2人で良い結果が出せるようにしたいと思います。
悠さんが“勝てる”と言ってくれていたことが唯一の安心源で、自分のなかでは不安だったんですが、
試合になったら絶対負けないという気持ちになりました。
リオ・パラリンピックには、出場するだけではなく、結果を残したいと思います」と話した。
男子・100kg超級の正木健人選手(エイベックスホールディングス)は、
ロンドンパラリンピックの金メダリスト。選考は不戦勝で、日本代表候補選手となった。
「ロンドン以降、世界の選手のレベルが上がり、タイトルを獲ることはできていません。
プレッシャーを感じたりしますが、出た大会は絶対、優勝する気持ちで臨んでいます。
パラリンピックの連覇を目指したいと思います。
ロンドンからの4年間はいろいろな方にお世話になったので、恩を返すためにリオでは
結果を出したいと思っています」
パラリンピック開催国のブラジルが出場枠を辞退したことにより、
招待枠で指名された女子63kg級の米田真由美選手は、
「私は、ブラジルが推薦国枠を辞退したことで、出場の推薦をいただきました。
自分が推薦された理由は分かりませんが、一つ一つ努力した結果がつながったのだと思います。
ロンドンパラリンピックでは、怪我をしてしまって初戦敗退し、敗者復活戦を欠場しました。
そこからリハビリをして、現在、ここに立っています。
こうした機会をいただいたことも、一つ一つ自分が努力してきた結果だと思っています。
また、周りの方の支援をありがたいと思います。ロンドン大会では7位だったため、
一つでも多く勝って、メダルに手が届くように頑張りたいです」と意気込みを示した。
(取材・撮影:河原由香里)