第26回IPC公認日本パラ陸上競技選手権大会(7月18日、19日、長居陸上競技場)で、
男子T54クラス(車いす)は、100m、200m、400mで永尾嘉章選手(52歳、ANAORI A.C)が優勝。
永尾は200mで25秒80の日本新記録。400mでは48秒52の大会新記録を出した。
800m、1500m、5000mの中長距離は、樋口政幸選手(36歳、バリストライド)が優勝。
樋口は400mでは永尾に続いて2位に入った。
永尾は、記録更新という結果について、「コンスタントに練習ができていることと、
練習で付加のかけ方を変えたり、レーサーのセッティングを少し変えたり、いろいろなことを
少しずつ変えた相乗効果だと思います」とコメント。
永尾は、2014年10月に韓国で開催された仁川アジアパラゲームスの100mで銀メダルを獲得。
400mは予選で自己ベストを出したものの、決勝では表彰台に届かなかった。
アジアパラゲームス以降、世界で勝負するために取り組んできたことが、結果につながっているという。
「400mは、アジアパラで自己ベストが出たんですけど、それでも48秒台でした
(現在400mの日本記録は永尾が持つ47秒59)。世界で戦うには47秒台が必要で、それをクリアするには、
何かを変えないといけないと思いました。考えられることは、トレーニング方法を変えることと、
レーサーのセッティングを変えることでした。アジアパラが終わってからいろいろなことを試しています」と永尾。
2016年のリオ・パラリンピックを視野に入れ、世界で勝負できる走りを追求していくつもりだ。
中長距離では他の選手の追従を許さない強さをみせつけた樋口は、
今年5月のスイス遠征で800m、1500mで日本新記録を出しており、
昨年のアジアパラゲームス以降、冬季から取り組んできた身体づくりやトレーニングが
結果につながっている。
樋口は、世界における自身の実力について、「5月のスイスオープンでは2番手(800m、1500m)、
3番手(5000m)に入れたんですが、パラリンピックになると海外の選手はさらに力を上げて
臨んできますし、今の段階では、パラリンピックでは決勝に上がれるかどうかというところだと
思います」と話す。
世界記録保持者であるスイスのマルセル・フグ(Marcel Hug)選手をはじめ、昨年のアジアパラゲームス800m、1500m、5000mの表彰台に立ったタイの選手(Tana Rawat選手、KONJEN Saichon選手ら)など、
T54の中長距離は特に強豪選手が顔をそろえる種目となっており、樋口は「パラリンピックでは、誰が勝ってもおかしくない」という。
自身が強豪選手たちとの戦いを制するために必要なものは、スプリント力だと考えている。
2016年のリオ・パラリンピックを視野に入れながら、今年の後半はIPC陸上世界選手権
(10月、ドーハ)を照準に、調整を続けるつもりだ。
20代の鈴木朋樹選手、渡辺勝選手らも、世界の舞台での活躍を目指している。
鈴木は今大会800m、1500mともに3位。渡辺は、400m3位、800mで2位に入った。
今シーズン後半のレースに注目したい。

山本浩之選手(1500m:2位、5000m:2位)
5月の仙台国際ハーフマラソン以降、レーサーのポジションを変えて、加速力は改善してきたと感じている。メイン種目のマラソンに向けて調整を進め、今年はシカゴマラソン、ニューヨークシティマラソン、大分国際マラソンに出場する予定。
T54男子【結果】
■100m
1位 永尾嘉章15秒34(ANAORI A.C)
2位 佐矢野利明15秒52(ホンダアスリート)
3位 生馬知季 15秒59(大阪パラ陸協)
■200m
1位 永尾嘉章 25秒80 日本新記録 (ANAORI A.C)
2位 生馬知季 26秒69(大阪パラ陸協)
3位 佐矢野利明 27秒15(ホンダアスリート)
■400m
1位 永尾嘉章 48秒52 大会新記録(ANAORI A.C)
2位 樋口政幸 48秒68 (バリストライド)
3位 渡辺勝 50秒47 (TOPPAN)
■800m
1位 樋口政幸 1分39.00(バリストライド)
2位 渡辺勝 1分40.59(TOPPAN)
3位 鈴木朋樹 1分40.68(関東身障陸協)
■1500m
1位 樋口政幸3分04.55(バリストライド)
2位 山本浩之3分07.13(Team Heart Space)
3位 鈴木朋樹 3分07.40(関東身障陸協)
■5000m
1位 樋口政幸 10分44.78(バリストライド)
2位 山本浩之 11分05.25(Team Heart Space)
3位 久保恒造 11分28.23(日立ソリューションズ)
(取材・撮影/河原由香里)